トレードで負けた夜、みなさんは何を反省していますか。
「エントリーが早すぎたかな」「あそこで利確しておけば」。負けるたびに、どこかを直そうとする。真面目な方ほど、そうかなと思います。
でも実は、この「負けたら反省する」という真面目な習慣そのものが、上達を止めていることがあります。
今回は、「負けトレード」と「失敗トレード」はまったくの別物、という話を書きます。
私が資金を溶かしていた時代に、一番知りたかった区別です。
振り返りには、軸が2つある
トレードを振り返るとき、ほとんどの人は「勝ったか、負けたか」だけを見ています。
でも、軸はもう一つあります。「ルール通りにやれたか、やれなかったか」です。
勝ち負けは結果の軸。ルール通りかどうかは過程の軸。
この2つは、まったく別のものです。ここでは、ルール通りにやれたトレードを「成功トレード」、ルールを破ったトレードを「失敗トレード」と呼ぶことにします。
つまり、「負けトレード」の反対は「勝ちトレード」ですが、「失敗トレード」の反対は「成功トレード」。負け=失敗、ではないんです。
トレードは4種類に分けられる
2つの軸を掛け合わせると、すべてのトレードは4種類に分かれます。
勝った | 負けた | |
|---|---|---|
ルール通り | ① 理想形。直さない | ③ 想定内の負け。直してはいけない |
ルールを破った | ② 一番危険。必ず直す | ④ 当然直す |
④の「ルールを破って負けた」は、分かりやすい。痛い思いをしているので、反省もしやすいです。
問題は、②と③です。
勝ち負けだけを見ている人は、②を「勝ったからOK」と放置して、③を「負けたから」と直そうとします。直すべき対象が、真逆なんです。
一番危険なのは「ルールを破って勝った」トレード
損切りラインをずらしたら、たまたま価格が戻ってきて助かった。予定にないナンピンをしたら、結果的にプラスで終わった。
結果だけ見れば「勝ち」です。口座のお金も、たしかに増えています。
でも中身は、たまたま勝ってしまった失敗トレードです。そしてこの「まぐれ勝ち」には、怖い点が2つあります。
一つ目:脳が「破ってよかった」と学習する
人間の脳は、結果で学習します。ルールを破った直後にお金が増えると、「破る→儲かる」という回路が強化されてしまう。
次に同じ場面が来たとき、ほぼ確実にまた破ります。
損切りをずらす行為は、9回助かっても、10回目に口座を破壊する一発を連れてきます。破った回数が増えるほど、その一発は大きくなっていきます。
二つ目:手法が、少しずつ別物になっていく
もう一つは、気づきにくいところです。ルールを破るたびに、手法が少しずつ変質していくことです。
今日は損切りを10pips深くした。先週は利確を手前に置いた。
一つひとつは小さな逸脱でも、積み重なると、気づいたときには「自分が何のルールで戦っているのか、自分でも説明できない」状態になります。
教材を渡り歩いていた頃の私が、まさにこれでした。借りてきた手法を検証しないまま使い、負けるたびに少しずつ手を加えて、最後には原型がなくなっている。
原型がないということは、そのルールの成績を検証で確かめる方法すら、もうないということです。それで勝てるはずがありませんでした。
「想定内の負け」は、設計図に書いてある経費
一方、③の「ルール通りにやって負けた」トレードはどうか。
勝率100%の手法は存在しません。たとえば勝率57%の手法なら、100回トレードすれば43回は負ける設計になっています。
この43回の負けは、手法を作った時点で最初から決まっている負けです。言ってみれば経費です。
お店を経営していれば、仕入れや家賃という経費が毎月出ていきます。
経費が出ていくこと自体に、いちいち落ち込む経営者はいません。売上から経費を引いて、残りがプラスになる設計かどうか。見るべきはそこだけです。
トレードも同じで、43回の負け(経費)を払いながら、57回の勝ちで回収して、トータルをプラスにする。負けは、その設計の一部です。
負けるたびに直すと、設計が壊れる
ここで、③の負けを「どこが悪かったんだろう」と直し始めると、何が起きるか。
考えてみてください。直近の1回の負けが持っている情報は、たった1回分です。一方、そのルールを支えているのは、過去の何百回という検証です。
1回の負けた記憶を理由にルールを書き換えるということは、数百回分のデータを、たった1回の、しかも感情がたっぷり乗った記憶で上書きするということです。
冷静に考えると、かなり無茶なことをしています。
これを繰り返すと、検証で「トータルでプラスになる」と確認したはずの設計が、負けた記憶に引きずられて少しずつ壊れていきます。
ルールを直していい場面は、一つだけです。検証データが「このルールは通用しなくなってきた」と示したとき。修正のトリガーは、感情ではなくデータです。
見分ける質問は、一つだけ
では、目の前の負けが「想定内の負け(③)」なのか「失敗トレード(④)」なのか、どう見分けるか。
質問は一つで足ります。
「まったく同じ場面がもう一度来たら、また同じようにエントリーするか?」
答えがYesなら、それは想定内の負けです。ルールが機能した証拠なので、直すところはありません。同じ場面が来たら、また同じように入ればいい。
答えがNoなら、「本当はルールの条件を満たしていなかった」「感情で入った」なら、それは失敗トレードです。負けたことではなく、ルールを守れなかったことを反省します。
今日からできる、記録の付け方
この考え方は、記録の付け方を一つ変えるだけで実践できます。
トレード記録に、勝ち負けとは別に「ルール通りだったか」の○×欄を作ってみてください。
そして、振り返るのは×が付いたトレードだけ。○が付いた負けトレードは、振り返らなくていい。むしろ、振り返ってはいけません。
最初は気持ち悪いと思います。負けたのに反省しないなんて、サボっているような罪悪感がある。
でも、○の負けを掘り返して「次はもっとうまくやろう」と考え始めると、ルールの外に出てしまいます。
反省する対象を絞る。これだけでも、手法は崩れにくくなるかなと思います。
まとめ:負けはゼロにできない。失敗はゼロにできる
勝率100%がない以上、負けをゼロにすることは誰にもできません。そこに力を使ってはいけません。
でも、失敗トレード(ルールを破るトレードのこと)は、努力でゼロに近づけられます。
負けた夜に自分へ聞く質問は、「なぜ負けたのか」ではなく、こちらです。
「その負けは、想定内ですか?」
想定内なら、それは経費です。いつも通り、次のチャンスを待つだけかなと。







